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営業とマーケの連携を強くするSLAの作り方

「マーケが渡したリードを営業がフォローしてくれない」「営業からは“質が低い”と言われるが、何をもって低いのか分からない」——営業とマーケの間に流れるこうした不満は、多くのBtoB企業で繰り返されています。問題の本質は個人の怠慢ではなく、両者の役割と基準が言語化されていないことにあります。

本稿では、営業とマーケの連携を仕組みとして強くするためのSLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意)の作り方を、社外CMOとして関わってきた現場の感覚を踏まえて解説します。明日から自社で叩き台を作れるレベルまで、手順とチェックポイントに落とし込んでお伝えします。

1. なぜ今、営業とマーケの間にSLAが必要なのか

SLAというと外部ベンダーとの契約書のような印象がありますが、社内部門間でも有効です。営業とマーケの間で交わすSLAとは、簡単に言えば「マーケはこういうリードをこの数だけ渡す」「営業はそれをこの時間内・この方法でフォローする」という相互の約束事です。

SLAが必要になるのは、おおむね次のような状況です。

こうした症状は、両部門が善意で動いていても起こります。基準を揃えるための共通言語がSLAだ、と捉えてください。

2. SLAに盛り込むべき5つの要素

SLAの形式に決まりはありませんが、最低限以下の5要素は押さえておきたいところです。

2-1. リードの定義(MQL/SQLの基準)

「マーケが渡すべきリード(MQL)」と「営業が商談化に進めるべきリード(SQL)」を、誰が見ても判定できる条件まで具体化します。業種・従業員規模・役職・検討時期・行動履歴など、複数条件の組み合わせで定義するのが現実的です。

2-2. リードの量とペース

マーケが月にどの程度のMQLを供給するか、季節変動も含めて目安を持ちます。「月100件」では粗すぎるので、できれば週次・セグメント別に置きます。

2-3. 営業の対応スピード

例えば「資料請求から24時間以内に初回連絡」「ウェビナー参加者は3営業日以内」など、リード種別ごとに目標時間を決めます。スピードは商談化率に直結しやすい指標です。

2-4. フィードバックのルール

営業がリードを評価し、マーケに戻す仕組みです。SFA上で「商談化/不可」「不可の場合の理由」を必須入力にするだけでも効果があります。

2-5. KPIとレビュー頻度

SLAは作って終わりではなく、月次でレビューし、四半期ごとに数値を見直す前提で設計します。

3. リード定義を揃える具体的な進め方

SLA策定で一番つまずくのが、リード定義のすり合わせです。次の手順で進めると現場が動きやすくなります。

  1. 過去半年〜1年の受注案件を20〜30件抽出する
  2. 受注に至った企業・担当者の属性、初回接触チャネル、検討期間を一覧化する
  3. 共通項を抽出し、「受注しやすいリード像」を言語化する
  4. その像から逆算してMQL条件を設定する
  5. 営業責任者とマーケ責任者で合意し、文書化する

よくある失敗は、マーケが理想論で条件を作ってしまい、現実のリード量と合わなくなるケースです。「受注実績」を起点に逆算するのがポイントです。

4. 対応スピードとフィードバックの仕組み化

SLAは紙の上で合意しても、運用に乗らなければ意味がありません。次の3点を業務フローに組み込みます。

フィードバックは、自由記述ではなく選択式にするのがおすすめです。「予算未確定」「決裁権なし」「タイミング不一致」「競合導入済み」など、5〜7択程度に絞ると、マーケ側が次の打ち手に活かしやすくなります。

5. SLA運用でつまずきやすいポイント

導入時によくある落とし穴をいくつか挙げておきます。

5-1. 数値が一人歩きする

「MQL月150件」が目的化し、質の悪いリードまでカウントされる状態です。質と量をセットでモニタリングし、商談化率も同時に追います。

5-2. 営業が忙しくてフィードバックを返さない

入力工数を最小化する設計が重要です。SFAの必須項目を絞り、ワンクリックで返せる選択肢にします。

5-3. 経営層が関与しない

SLAは部門間の力関係に左右されやすいテーマです。経営者または事業責任者がスポンサーとなり、両部門の評価指標にSLAの達成度を組み込むと運用が安定します。

5-4. 一度作って見直さない

市場環境や商材ラインナップが変われば、最適なリード定義も変わります。最低でも半期に一度はSLAをアップデートする運用にしてください。

6. SLA導入の進め方ロードマップ

最後に、ゼロからSLAを導入する場合の現実的なステップを示します。

  1. 1〜2週目:受注実績の棚卸し、両部門の課題ヒアリング
  2. 3〜4週目:MQL/SQL定義のドラフト作成、関係者レビュー
  3. 5〜6週目:SFA・MAの設定変更、通知・ダッシュボードの整備
  4. 7〜8週目:パイロット運用、現場フィードバックの収集
  5. 3か月目以降:月次レビューを定例化し、四半期ごとに数値を見直す

いきなり完璧を目指すと前に進みません。「8割の精度で運用に乗せ、走りながら直す」方針で進めるほうが、結果的に早く成果が出ます。

まとめ

営業とマーケの連携を強くするSLAは、契約書のような堅苦しい文書ではなく、両部門が同じ景色を見るための共通言語です。リード定義、量と質、対応スピード、フィードバック、KPIの5点を押さえ、運用前提で仕組みに落とし込むことが肝になります。

次の一歩として、まずは過去の受注案件の棚卸しから始めてみてください。「受注しているのはどんなリードか」を両部門で眺めるだけでも、議論の出発点が大きく変わります。そこから1枚のSLAドラフトを作り、3か月後にレビューする——この小さなサイクルが、組織の連携を着実に強くしていきます。