
「展示会で数百枚の名刺を獲得したものの、翌月の商談化は数件止まり」。多くのBtoB企業で繰り返されている光景です。獲得コストは高いのに、追客の設計が曖昧なまま営業任せになっており、ホットなリードまで取りこぼしてしまう。これは営業個人のスキルの問題というより、追客フローとスクリプトが用意されていないことに起因するケースがほとんどです。
本稿では、展示会で獲得したリードを商談化するための追客スクリプトを、初動メール・電話・ナーチャリングの3層で設計する手順を解説します。明日からそのまま使える型と、現場で陥りがちな失敗までを含めてお伝えします。
1. 追客の前提:リードを3つの温度帯に分ける
展示会リードは一括りにしてはいけません。獲得時点の会話内容や行動を基に、最低でも3つに分類しておくと、以降の追客設計が格段に楽になります。
- Aランク(ホット):具体的な課題・導入時期・予算のいずれかが確認できたリード
- Bランク(ウォーム):情報収集フェーズ。製品デモや資料に関心を示したリード
- Cランク(コールド):ノベルティ目的、業界研究など、現時点では商談可能性が低いリード
ブースでの会話メモに「来場目的」「現状の課題」「検討時期」の3項目だけでも書き残すルールを徹底しておくと、翌日の仕分けが数時間で終わります。この分類がないまま一斉メールだけで追客するのが、最もよくある失敗パターンです。
仕分けのチェックポイント
- 名刺のバーコードやアプリ入力だけに頼らず、口頭での一言メモを必ず残す
- 展示会終了当日〜翌営業日中にランク分けを完了させる
- Aランクは営業へ即日エスカレーション、B・Cはマーケ側で保持
2. 初動メール:24時間以内に出す「お礼+次アクション」
展示会リードの熱量は、72時間を過ぎると急速に下がります。全ランク共通で、翌営業日中にはお礼メールを送信するのが基本です。ただし、ランク別に本文と次アクションの提示を変えます。
Aランク向けメールの型
- 件名:「【〇〇展のお礼】△△についてご相談いただいた件」など、会話を想起させる具体文言
- 冒頭:ブースでの会話内容を1〜2行で引用(「〇〇の属人化が課題とのこと…」)
- 本文:関連する事例や解決の方向性を3行程度で
- 締め:日程候補を2〜3案提示、またはカレンダーURLを添付
Bランク向けメールの型
- 件名:「【〇〇展のお礼】ご関心いただいた△△の資料をお送りします」
- 本文:ブースで案内した資料・デモ動画のリンクを明示
- 締め:「ご不明点があれば15分お電話でも」と、低負荷な次アクションを提示
よくある失敗は、全員に同じ「お礼+会社案内PDF」を送ってしまうこと。Aランクの温度を一気に冷ましてしまいます。手間でも、Aランクだけは1通1通書き分けてください。
3. 電話追客スクリプト:Aランクへの初回コール設計
Aランクはメールだけでなく、2〜3営業日以内に電話をかけます。展示会で会っている相手なので、通常のテレアポより格段に接続率・会話率が高いのが特徴です。ここで使うスクリプトを用意しておきましょう。
基本スクリプトの構成
- 想起フック:「先日の〇〇展、△△ブースでお話しさせていただいた□□です」
- 会話の引用:「〇〇の運用についてご相談いただいた件で、改めてお電話しました」
- 価値提示:「似た課題のお客様で、〜という進め方で改善された事例がございまして」
- 次アクション提案:「30分ほどお時間いただき、具体的にご説明させていただけませんか」
- 日程クロージング:「来週前半ですと火曜午後、木曜午前はいかがでしょうか」
断られた場合の分岐
- 「今は忙しい」→ 時期を再確認し、ナーチャリングリストへ移管
- 「情報収集段階」→ Bランクへ再分類し、資料送付とウェビナー案内に切替
- 「他社検討中」→ 比較ポイントの資料を提示し、1週間後に再コール
スクリプトは一字一句読む台本ではなく、話の順番と押さえどころを揃えるためのものと捉えてください。新人営業ほど効果が出ます。
4. B・Cランクのナーチャリング:3カ月の中期シナリオ
Bランク以下を放置しないために、3カ月間の中期シナリオを組んでおきます。目的は「検討フェーズに入った瞬間を逃さないこと」です。
- 1週目:お礼メール+関連資料
- 2〜3週目:事例メール(同業種・近い課題のもの)
- 1カ月後:ウェビナーやミニセミナーの案内
- 2カ月後:ホワイトペーパーなど実務ノウハウ提供
- 3カ月後:インサイドセールスから「状況伺い」コール
この間、資料ダウンロードやメール内リンククリックなど、行動シグナルが出た相手はAランクに昇格させ、営業へ即連携します。MAツールがなくても、開封率・クリック率が確認できるメール配信ツールがあれば十分始められます。
5. 商談化率を高める運用のポイント
スクリプトを作っても、運用が噛み合わないと成果は出ません。以下を押さえておきましょう。
- マーケと営業で引き渡し基準(SLA)を明文化する:Aランクは当日中、Bランクは2営業日以内、など
- 追客ステータスをSFA/CRMで一元管理:「メール送付済」「電話接続済」「次アクション日」まで必ず記録
- 振り返り会を展示会後1カ月・3カ月で実施:ランク別の商談化率とスクリプトの改善点を議論
- スクリプトは四半期ごとにアップデート:市場や自社事例の変化を反映
よくある失敗は、営業に「あとは任せた」と丸投げして、追客の進捗が見えなくなるパターンです。マーケ側が追客ステータスまで見届ける体制にすることで、取りこぼしは大きく減ります。
まとめ
展示会リードの商談化は、特別なトークスキルではなく、仕分け→初動メール→電話スクリプト→中期ナーチャリング→運用管理という一連の設計で決まります。重要なのは、ランク分けを徹底し、Aランクには72時間以内に個別対応、B・C以下は3カ月の中期シナリオで追い続けることです。
次の一歩として、まず直近の展示会リードを3ランクに仕分け、Aランク向けのメール・電話スクリプトのひな型を1枚にまとめてみてください。たった1ページのスクリプトがあるだけで、追客の初速とチーム全体の歩留まりは目に見えて変わってきます。